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なぜ、医歯薬系に進学するのか。

私立中高一貫校の実際

倫理感・職業観をどう養うか。公立校との比較を通して―

私立中高一貫校の中には、中1の段階から医学・薬学などへの進学をめざした独自のコースを設定している学校もある。

女子進学校では四天王寺の「医志コース」と大谷(大阪)の「医進コース」、共学校では帝塚山学院泉ヶ丘の「医進コ ース」がその代表格。

これらのコースは、他のコースよりも募集定員が少なく、入試の難度も高めに設定されているのが特徴。学力的に上位の生徒が集まっていることから、効率よく深い学習を行っている。各校がキャリア教育や進路指導を通じて、どのように生命に対する倫理観や職業感を育んでいるのかは、シラバス等でぜひとも確認してほしい。

ほかに、神戸国際では、中1・中2の二年間はあえてコース編成をせず、全員にさまざまな体験をさせる。自分に合った進路を見つけたうえで、中3から「理数・医歯薬コース」を設置している。

文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けている高槻は、もともと国公立大学進学志向の強い進学校で、医学部進学を希望する生徒も多かった。経営母体である大阪医科大学での実習も行われており、これからさらなる連携教育が注目されている。

また、雲雀丘学園では、高校生を対象に「アカデミック・サマー」と称して、鳥取大学医学部をはじめ、各大学・研究機関でラボステイが行われている。

 

カトリック系男子校・六甲学院では、毎年クリスマスに講演会が行われる。世界の情勢を知る卒業生を講師に迎え、食糧事情や貧困問題を考える機会にするなど、内容は多彩。
考えることが行動への第一歩となる

 

次に大学附属系の私学に注目してみることにしよう。

近畿大学附属には「医薬コース」があり、近畿大学医学部やその附属病院に赴き、現地で本物の器具や装置を使った実習が行われている。

京都府長岡京市にキャンパスを移した立命館は、中学に「アドバンストコース」を設けており、これは将来的に医学系や難関国公立大をめざす高校の「メディカルサイエンスコース」に接続する。

武庫川女子大学附属には「SS(スーパーサイエンス)コース」があり、その多くが併設大学の薬学部に進学し研究を続けている。在校時より大学とのきめ細やかな連携教育が行われているが、熱望すれば放課後を利用して大学の研究室で継続して指導を受けることができるというからすごい(次頁参照)。

東海大学付属仰星では、中等部に「英数特進コース」があり、国公立大や東海大学医学部への進学を視野に入れたコースとして設定されている。

また、併設大学に薬学部を持つ同志社女子などでは、中高大連携教育の中で倫理感や職業感を学ぶ機 会も多い。

医学に限らず、将来設計を6年かけて行えるのは、やはり中高一貫教育だからこそだと言えるだろう。

公立中学校でいう進路指導というのは当然、高校受験に向けたものとなる。中3でクラブ活動を引退する夏以降は、高校受験に向けてまっしぐら。高校になれば、多くが2年時から文系・理系のコース別編成となるため、1年生の段階で文理選択を考えなくてはならない。2年時からは学部・学科を絞り込むなど、大学受験に向けた取り組みもかなり慌ただしいものとなる。

それに対して、多くの私立中高一貫校では、公立校と比べて圧倒的に多い授業時間数を確保しており、高2で高校課程をほぼ履修し終え、高3時は志望大学に向けた演習にじっくりと取り組むことができる。ここが公立中学校・公立高校と3年ずつ分断されたスタイルとはまったく異なる点だ。

私学では、創立の理念によって人間教育の柱となる部分が明確になっている。校内だけでなく野外での体験型アクティビティーも豊富で、自身を取り巻く環境や社会との繋がりを考える機会が多く、低学年のうちから自然な形で将来を考えるようになる。また、実際に社会で活躍する卒業生が母校に戻って後輩たちに講演をしたり、講座を開いたりと、早い段階から職業観が育まれるのもメリットの一つ。

四季折々の自然を感じることのできるロケーション。地域の方々との異年齢交流や国内外でのボランティア活動。大学や学会と繋がりを持つ先生方、有形無形の財産が、社会に役立つ多くの人材を輩出する私学教育の中に詰まっている。