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「寮」のある私学という選択

鹿児島にある仙巌園(別名「磯庭園」)は薩摩藩主を務めた島津氏の別邸。桜島を借景に錦江湾を池に見立てた美しい庭園として知られています。歴代の当主たちによって改築されてきましたが、中でもNHK大河ドラマ「西郷どん」に登場した第28代当主・島津斉彬は、この地にヨーロッパ式の製鉄所やガラス工場などを造り近代化に大きく貢献しました。
鹿児島のシンボルとして知られる桜島は、今から約2万6千年前にできたと言われています。北岳と南岳を主峰とする複合火山で、現在も毎日のように噴煙が上がっています。まさに地球の胎動とも思える噴火は、この地で暮らす人々にとってエネルギーの源そのものと言ってもいいでしょう。私立中高一貫校の教育環境が素晴らしいことを本誌は繰り返し紹介してきましたが、その地でなければ味わえない風土は確かにあります。親元を離れて、たくましく生活する寮生活も一つの選択肢として、学校選びをしてみてはいかがでしょうか――

DORMITORY LIFE① 寮生活潜入レポート!

INTERVIEW 寮監長に聞いてみよう!
白陵
https://www.hakuryo.ed.jp/

反抗期も寮で乗り越える 集団生活でたくましく成長
 中学受験を考えた際、ひとつの選択肢としてあげられる『寮生活』。寮を選択するまでの過程はそれぞれですが、親としては小学校を卒業したばかりの子どもを寮に入れるという決断に、多かれ少なかれ葛藤があるでしょう。 兵庫県高砂市、その自然豊かな環境に位置する白陵中・高には男子のみ入寮可能な『白陵寮』があります。寮生を支える寮監は年齢層も幅広く、元自衛官の男性寮監や元警察官の女性寮監を含む計6名が交代で勤務し、万全の体制で子どもたちをサポートしています。企画特集のはじめに、同校の寮生活について木下寮監長にお話を伺いました。


白陵寮寮監長
木下誠也先生

 「白陵寮の寮監として子どもたちと接して22年、寮監長としては15年になります。現在、白陵寮では西は佐賀県、東は富山県出身の子どもたち27名が寮生活を送っています。そのうちの20名は兵庫県内の子です。県内であっても通えない子もいれば、通学圏内の子もいます。通学圏内の子の中には子ども自身が学校のホームページなどを見て寮に関心を持ち、子どもが主になって寮を選ぶケースが少なからずあります。そして、県内外問わず子どもにとって誘惑の多い環境を断つため親が寮を勧めるケースもあります。その他、お仕事の都合等様々な理由で入寮という選択をされます。
 まだ12、13歳の子どもですから保護者の方のご心配は当然です。保護者の方にとっては、寮生活で得られるものへの『期待』、そして子と離れる『不安や寂しさ』、このどちらが増すか、それが寮を選択するか否かの指針となるでしょう。入寮前の質問で多いのは主に以下の三点です。一つ目は学業成績のこと。二つ目は通塾が可能か。三つめは近くに病院がどれくらいあるか。いざ入寮の際には保護者の方のほうが子どもと別れがたく、涙を流される方も多いのですが、意外と子どものほうはあっさりしているものです。ひと昔前にはホームシックになる子もいましたが、最近は他学年との垣根が低くなっていることもあり、寮生を見ていても皆仲が良く、楽しそうだと感じます。


勉学を妨げる坦音の無い静かな環境

 白陵寮では基本1部屋に2人体制で、高校3年生は個室になります。他人との共同生活になるので意見が割れたり、自分の思いが伝わらなかったり、生活しているだけで自然に社会性を学んでいきます。もちろん、まだ子どもですのでできないことも初めは多いですし悩むこともあるでしょう。寮監は朝晩一緒に食事をとり見守る中で気になる子には声をかけ、寄り添うことを大切にして共に生活をしていきます。特に反抗期の時期や中3~高1の中だるみの時期では顔が暗くなったり目を合わさなくなったりすることも見受けられますが、親じゃない第三者だからこそ聴く耳を持ってくれることもあります。そこを乗り切ればまた子どもは落ち着いていきます。 入寮式では私から『時間・食事・身辺整理をきちんとしよう』という話をします。他人との生活ですので時間を守ることは周囲への気遣いであり、食事は感謝の気持ちを持つということです。そして学習環境は自分で整えようということを伝えます。同世代との規則正しい集団生活という家庭では決してできない経験をし、彼らは6年間でたくましく成長します。私としては寮生活をおすすめしたいと思っていますが、想像と違ったという入寮後のミスマッチは避けるべきこととして、白陵寮の考え方や実状は保護者の方へ正確にお伝えするようにしています。」

ラ・サール
寮生活を支える盟友そして良きライバルの存在


中学は8人部屋、高校は個室。「意外と高校生が寂しがるんですよ(笑)」と谷口副校長。

全校生徒の約65%を寮生と下宿生が占める同校。約600人を収容できる寮は、エントランスロビーやガラス張りの食堂、おしゃれなパティオなどがあり、さながらホテルのよう。気になる寮生活は毎朝7時20分の点呼で学校生活がスタート。8時10分までに朝食を終えて登校し、午前中の授業を終えれば寮生は一斉に昼食をとる。午後の授業後はほとんどの生徒がクラブ活動を行い、帰寮後は中高別々の大浴場へ。夕食は17時半から19時の間にとり、19時15分に点呼。中学生はそこから3時間の学習タイム(途中休憩あり)となる。高校になるとさらに45分の自習時間が加わり、就寝時間は24時となる。


高校の自習室(写真左上)。ゆったりとした空間が広がる1階のエントランスロビー(写真左上から2番目)


❶洗濯は寮スタッフによって行われ、個々のボックスに折りたたんで入れてもらえる。
❷中学は8人部屋。「毎日が合宿みたい」と楽しげに語る生徒たちの生き生きとした姿に安心!
❸中学の自習室は個別のブースになっている。学習机や本棚などの収納もあり、それぞれが目標を書いて張っていた。
❹大浴場は中学生と高校生とが別々に設けられている。寮内の清掃は原則スタッフが行う。
❺生徒個々に割り当てられたダイヤルロック式の貴重品ボックス。スマホは禁止、公衆電話は10台あり、国内のみならず国際線もつながる。
❻❼夕食時の中学生たちの様子。管理栄養士が考案するレシピは一汁三菜、栄養バランスも最高!もちろん、おかわりもOK