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私学QUALITY

約160万年も前に起こった火山活動によってできたのが、ご覧の柱状節理。流れ出したマグマが冷えて固まる際に、規則正しい割れ目が生まれたと言います。兵庫県豊岡市にある玄武洞公園では、こうした自然が生み出すダイナミズムを感じることができます。私立中高一貫校には、こうした本物にふれる取り組みが数多くあります。
撮影/岩井 進

たとえば、名だたる建築家の手によって描かれたキャンパスのグランドデザイン。私立中高一貫校の学校建築においては、周辺の自然環境をうまく採り入れ、校舎の外観や室内空間、内装にいたるまでディテールへのこだわりが見られます。インテリアとしての椅子や机、照明をはじめとする調度品の数々、絵画や楽器といった本物に触れる機会は大切な思春期の学校生活を彩りある豊かなものにしてくれます。さらに、そこでは一流のものや本物に触れる体験活動が行われるわけですから、私学教育の価値は高まるばかりなのです。

私立中高一貫校ならではの本物志向

私立中高一貫校の学校生活の中には、本物がいっぱい。たとえば、キャンパス全体が重要文化財に、あるいは伝統ある校舎が国の登録有形文化財に指定されるなど、創設期の古き良き面影をいまに残している学校があります。そうかと思えば、最新の建築技術によって洗練されたモダン・デザインを採用する校舎もあります。いずれの場合でも、学校の位置する環境を踏まえたうえで、地の利を生かした設計が行われているのです。上質なデザインのもとで過ごす時間を想像してみてください。本誌の取材で教室をのぞいたり廊下を歩いたりしていると、素敵なものに出会う場面がしばしばあります。ここでは、いくつか紹介することにしましょう。

●男子校 ●女子校 ●共学校


「博物学」といえば、やっぱり同志社!
教科ごとの専門性をより高めるために「教科センター方式」を採用する同志社。教科ごとに教室とメディアスペース(MS)、教員準備室が一体化されている。併設小学校の体育館1階には、数千点もの稀少なコレクションを持つ標本館がある。左は理科「生物」のMSにある巨大なカバの剝製。その大きさをぜひ体感してみてほしい。右は同志社女子に展示されているワニなどの剥製。高3の選択科目「生物探究」では、マウスの骨格標本づくりも行われている。


  • 貴志康一(作曲家)など著名な芸術家を輩出している甲南。講堂施設の中にアートサロンと、日本の抽象絵画の先駆者である洋画家・長谷川三郎の記念ギャラリーがある。


  • 甲陽学院の文化祭は「音楽と展覧の会」と言い、芸術と学術の香りがただよう行事。中学の音楽室の扉には、過去に同校を訪れた海外の著名な指揮者のサインもあった。


  • 広島の修道の資料室には、貴重な書籍が多数保存されている。写真は同校出身の日本画家・平山郁夫の絵画や色紙などの展示コーナー。本館ロビーには陶版画「安芸の小富士」も。


  • 講道館柔道の創始者・嘉納治五郎の屏風を応接室に飾るのは。創設時に顧問を務めた彼の書は懐がゆったりと広く実に堂々としており、中国唐代の書家・顔真卿を彷彿させる。


  • キャンパスの一画に数寄屋造りの茶室を持つのは小林聖心女子学院。文芸や芸術に対する取り組みも本格的。放課後には茶道部(表千家)が茶の湯の文化を学ぶ。


  • 甲南女子の音楽室にあるピアノは、「スタインウェイ&サンズ」製。授業はもちろん、コーラス部の活動など、日々の学校生活の中で素晴らしい音色を聞いて過ごす。


  • 神戸海星女子学院の音楽の授業ではグレゴリオ聖歌を歌う場面も。設立母体である修道会にちなんで、フランス語を第二外国語として学び、高2ではフランスへの修学旅行も行う。


  • キャンパス全体が重要文化財の指定を受けている神戸女学院。校舎群を含めた設計は建築家ヴォーリズによるもの。シェークスピアの戯曲に出てくる植物を集めたガーデンもある。


  • 校舎前に大きな金属製のオブジェがあるのは岡山白陵。「WISDOM(叡智)」と名付けられた彫刻家・竹内三雄の作品。生徒たちのインスピレーションを高める。


  • 入学後、生徒個々に解剖セットが配られるのは開明。理科教育には定評があり、中2では和歌山県加太湾で、海洋生物の採集から実験まで、宿泊行事として実習が行われる。


  • 関西学院の正門すぐの位置にある高中部管理棟(旧中学棟)。ヴォーリズ設計の南欧風の校舎は、男子校時代から大切にされてきた同校の象徴的な存在。部長(校長)室もここにある。


  • 校是の一つに「研究と訓練」があり、関西でも特に理系志向の強いのが白陵。地学分野では実際に岩石に触れて五感で学ぶ。生物部による、加古川での水生生物調査も有名。

国の天然記念物に指定されている「玄武洞公園」(兵庫県豊岡市)。
圧倒的なスケール感と景観に驚嘆! NHK「ブラタモリ」でも紹介!!

溶岩が冷え固まるときにできる美しい六角形の柱状節理。それぞれ特徴のある5つの洞(玄武洞・青龍洞・白虎洞・南朱雀洞・北朱雀洞)を観ることができる(公園観覧料/大人500円、学生300円)。公園のすぐそばには「玄武洞ミュージアム」(https://genbudo-museum.jp)があり、世界の珍しい鉱石や岩石、化石などを展示。ミュージアムショップや菓子工房なども併設している。


実際の体験を経て、学問としての裏付けを授業で行う。これは、中学から高校へと学びを深めてゆく私学教育の特長の一つと言える。身近な博物館や名所旧跡に赴く学校も多い。