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発想の原点を探る
新たな発想力を育むクロス・カリキュラム
教科という垣根を越えた「授業」とは何か
教科学習に裏付けされた知識を 有機的にネットワーク化する、 探究型の学び
教育学者で、学校法人親和学園理事長の山根耕平先生は、著書『総合的学 習の研究』の中で、次のような内容を書かれている。
覚えることによって蓄積された知識 を基礎とする学力だけでは対応できない21世紀の現代社会。いま求められているのは、必要な知識を発見・探究し、 それを用いて問題を主体的に解決していく学力であり、能力である。もちろん、その土台となる基礎・基本的な教 科学習は必要で、「探究する」過程で 学習することと生活することが統合さ れていくのだという。
そこで必要となるのが「知の総合 化」という作業。各教科学習で得られ た知識や技能が相互に関連づけられ、さらに深められて、児童や生徒の中で 総合的に作用することであり、その一つの手段としてカリキュラムを横断して学ぶ「クロス・カリキュラム」がある。これは、各教科・各領域の教育を縦糸に、現代社会の持つ課題(国際理解・情報・環境・福祉・健康など)を 学習課題として横糸に配し、両者を織り込んでいくもので、物事のとらえ方として「総合的」「横断的」に考える必要があると説く。
自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること―――
学び方やものの考え方を身につけ、 問題の解決や探究活動に主体的、創造的、協同的に取り組む態度を育て、 自己の生き方を考えることができるよ うにすること―――
これらは、文部科学省の現行学習指 導要領に盛り込まれた「総合的な学習の時間」のねらいである。子どもたち自らが考え、主体的に判断することができる、いわゆる「生きる力」を育むことが科目設定の目標となっているのだが、そうした発想のもとにジャン=ジ ャック・ルソー(1712〜1778) が見えると山根先生は指摘している。
啓蒙思想家ルソーは著書『エミール』の冒頭で、自らの教育観をこう述べている。
「生きるということは呼吸することではない。それは活動することだ。わたしたちの器官、感官、能力を、わたしたちに存在感を与える体のあらゆる部分をもちいることだ」
「人は子どもの身を守ることばかり 考えているが、それでは十分でない。 大人になったとき、自分の身を守ることを、運命の打撃に耐え、富も貧困も意に介せず、必要とあればアイスランドの氷のなかでも、マルタ島の焼けつく岩の上でも生活することを学ばなければならない」
これらの言葉の中には、子どもたちが知識の獲得のみを目的とするのではなく、生きていく力、判断力を養うことを目的にすべきだという思い、そして、子どもたちが自分に存在感を与えるために、すべての感覚を 用いるべきだというルソーの教育観・人生観が詰まっている。今から約250年も前の言葉だが、それまでの教育観にはなかった子どもたちを教育の対象としたことで、彼は「こどもの発見 者」だと言われている。
参考文献: 「学習指導要領」文部科学省 『総合的学習の研究その思想と展望』 山根耕平(2002.ナカニシヤ出版)