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ロボティクス

CLUBレポート①
帝塚山「理科部ロボット班」

中高合わせ総勢70名、世界的な活躍を見せる理科部ロボット班

「活動場所なんですが、実はフロアが分かれているんです――」

理科部ロボット班顧問の八尋博士先生(物理担当)に唐突に言われて驚いた。同部では中高生が共に活動しているが、中2以上が約30名、中1だけでも約40名もの部員が在籍している。まさかこれほどまでに生徒が集まっているとは思ってもみなかった。

ここ数年、部員たちのロボット大会での活躍は華々しく、メディアに取り上げられることもあってずいぶん知られるようになってきた。日能研が毎年11月にグランフロント大阪で開催している「サイエンスフェスタ」への参加経験もあり、中学受験をめざす小学生たちへのアピールもばっちり。ここ数年、ロボット班に憧れて同校に入学を希望する受験生も増えてきた。さらに驚いたのは、男子生徒ばかりかと思いきや、女子生徒の姿も多くとてもにぎやかで華やかな印象だったこと。マニアックではなくアカデミックな雰囲気が室内いっぱいに広がっていた。

「ロボット班の基本的な活動は週5日ですが、大会前にはほぼ毎日ここへきてプログラミングやロボットそのものの調整を行います」というのは、中学部長の大江宏明くん(中3)。チームごとに与えられたミッションや課題をクリアするために日々研究を行うわけだが、部員たちは口々に「ものづくりが大好き」だと笑顔で語る。

「今年で創部9年目となります。もちろん部員みんなが大学でロボット研究を志すとは限りませんが、これらの活動を通じて、将来さまざまな分野で活躍できる力を育みたいと思っています」と八尋先生。その力強いメッセージに、ロボット班の今後さらなる明るい未来を感じた。

古都奈良から世界にむけて発信する、帝塚山ならではのロボット研究

ロボットの設計も部員たちの手によって行われる。最初は手書きのデッサンから始まり、パーツの調達や組み立てと、試行錯誤を経て少しずつ形となってゆく。

高い実力でロボット世界大会に出場する機会も多い同部だが、2016年5月に大きなニュースが飛び込んできた。スペイン領カナリア諸島で開催されたFLL(ファースト・レゴ・リーグ)世界ロボット大会で、8名の部員が「アントレプレナーシップ(起業家精神賞)」3位を受賞したという。ロボット競技とともに行われるプレゼン競技で、「ゴミの使い道」という課題に対して、奈良公園の鹿のフンを使って色ガラスを作ることを英語で提案し、審査員特別賞を受賞したという知らせだ。世界40カ国から116チームが参加したが、日本から唯一の出場権を獲得したのが帝塚山のチームだった。

「課題をクリアできる機能はもちろんですが、デザインも極力シンプルなものを心掛けています」

いきなり世界大会での話となったが、もちろんこれらは日々の地道な研究活動があってこそ。学内では5~6月にかけて在校生向けにロボット教室を催し、低学年の部員たちがプレゼンを行う。また7月には地域に向けて、8月にはオープンスクールでと、学校のPRに一役買う場面も多くなってきた。

「ロボット製作では、いかにむだなく効率的に各パーツが連動して動かせるかというところに焦点をあてますが、やはり見に来てくれた方々に、ロボットって格好いいなと思ってもらえるようなものを作りたいです」

先輩たちの活躍を間近に見た後輩からは、いつか自分たちも世界で勝負したいという声をたくさん聞いた。同校が世界への発信基地として認識される日も近いのではなかろうか。

  • 理科部ロボット班中学部長・大江宏明くん(写真右)と副部長・松岡風我くん(左)はともに中3。大勢の部員たちを束ねる。

  • 収納スペースに並べられたロボットたち。基本的にはよりグレードアップをめざして何度も作り直されるという。

  • ものを分別しリサイクルするためのロボットを製作する生徒の姿も。その発想力や独創性には驚かされる。

  • プログラミングの調整に真剣な部員たち。時にはグループメンバーと協議しながら作業は進められる。

  • 現在、中1には6名、中2以上には各学年1~2名の女子生徒が在籍。同校は男女別学だがクラブは一緒に活動する。

  • ロボット製作には市販のパーツだけでなく、必要があれば電動の機械と工具で自ら加工することも多い。