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博物学

私学コレクション3 平安女学院
「登録有形文化財の校舎群」
明治期から現代に受け継がれるもの

 隣接する聖アグネス教会(重要文化財)は、日々の祈りの場。生徒たちにとって精神的支柱となっている。
モデルを務めてくれたのは、中学生のみなさん。

 「卒業生が戻ってきた時、コース編成などの制度は変わっていても、校舎も校風も変わっていないところに安心感があると、よく言ってくれます。だから、今でも卒業生の娘さんたちを預かることが多いのでしょうね。

 学校のすぐ隣には京都御所があり、市内の中心地というとても通いやすい場所にありながら、こうした歴史的な建造物を今もなお使いながら生活しているということに、脈々と受け継がれてきた大切なものの存在を感じますね。でも実をいうと、私たちはこれらの校舎や教会を、文化財としてあまり意識したことはないのです(笑)。平安女学院では、ごく自然に生活し祈りを捧げる場となっていますからね」と校長・今井千和世先生。

 大阪の川口居留地から京都に移転し、平安女学院として学校生活が始まったのは1895(明治28) 年。最初に建てられた「明治館」は、当時神戸の外国人居留地で活躍していたA・N・ハンセルによるもので、彼は英国王立建築家協会正会員のメンバーという凄腕の建築家。切り妻屋根の三棟を並べ合わせ、装飾性の高いデザインが特徴で、随所に施された意匠は当時ヨーロッパで流行していた様式がそのままリアルタイムで採用されたものだと言います。サロンとしての華やかな雰囲気を損なわぬよう、現在はピアノの発表や挙曲部の練習場所として使われるほか、大学での講義、入試説明会の会場となるなど、多目的に活用されています。

 下立売通に面して建っていた「大正館」は、中高生の教室が入る校舎として建て替えられており、現在は建造物のプレートのみが残されています。

 そして、中学・高校の玄関口であり、管理棟としての機能を持つのが「昭和館」。平安女学院を象徴する建物で、校舎の壁面には数々のレリーフ(浮き彫り細工)が施されていて、それぞれにキリスト教に由来した意味が込められています。内部の大階段や壁面には石材が多用されており、とてもレトロな雰囲気が漂っています。

 明治から令和に至るまで受け継がれてきた平安女学院の校舎には、まだまだ素敵な秘密がいっぱい。みなさんは幾つ魅力を発見することができるでしょうか。

四季折々に映える赤煉瓦の教会と校舎

梅雨の時期でも、紫陽花の花が赤レンガの壁を背景にとても美しく咲いています。古都ならではの風情を日々感じることができるのはとても豊かな気が致します。

 中庭でのドローンによる撮影。手前の「明治館」から反時計回りに「大正館」跡に建てられた現校舎、そして「昭和館」と続く。
 優美なデザインを持つ明治館は「アン王女様式」と呼ばれる。
 明治館の階段踊り場にあるシャンデリア。
 レトロな雰囲気を残す昭和館