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私学QUALITY

悠久の教えを心に響かせ、歩むべき道を開く

洛 南
https://www.rakunan-h.ed.jp

「御影供」

自らの心や行いを見つめ直す、月に一度の特別な日

 京都・五重塔が建つ東寺境内にあり、仏教の教えを根本に持つ洛南。弘法大師空海によってつくられた日本最古の私学〝綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)〞の流れを汲む同校では、弘法大師さまの月命日である21日にお大師さまを偲び、感謝の気持ちを表す真言宗の行事〝御影供(みえく)〞が校内でも行われます。生徒たちは入学後の道徳の時間、「洛南でどう過ごすか」を最初に学び、月に一度の御影供は自らの心や行いを見つめ直す特別な日であると教えられます。そして教職員にとっても、自省や感謝など様々な気付きを得る大切な日となっています。
 御影供当日、生徒たちは教室から講堂へ無言で移動し、心を落ち着かせます。この日は授業もクラブ活動も無く、講堂にて校長の講話を聴き教室にて作文を書いた後、生徒たちはお昼には下校します。校長の講話は毎回内容が異なり、世の中の話題や動物の話などの身近な話題から、仏教や哲学的な話に至るまで幅広く、中学1年生には少々難しい内容の時もありますが、背筋を伸ばし、手を合わせて受け止めようとする姿勢も大事とされています。講話の中で放たれる言葉は、生徒たちの心にどう響くのでしょうか。

洛南が洛南たる理由 それがこの御影供である


宗教科主任教諭・中谷祥桐先生(右)と
宗教科教諭・中井啓順先生(左)

 宗教科の中谷先生に御影供についてお話を伺いました。
 「洛南に入学してくる学生は学力も高く、目的意識をしっかり持っている子が多くいます。しかし、勉強だけしたいのなら他の学校でもできます。御影供は言うなれば知識と智慧(ちえ)の〝智慧〞の部分、いかに生きるかという心の教育です。弘法大師さまも勉学と人間性の両立を大事にされておられました。自らの内面に目を向け、反省や感謝、発見などの気付きから、人間として成長するこの御影供は、人間性教育の柱として洛南で最も大切な行事と位置付けられ、同時に最も洛南らしいものでもあるのです。」
 卒業生でもある中井先生は、大人になってから当時の自分の作文を読み、素直な自分に出逢うことで初心に還ることができたと言います。「作文は特に良いことを書かなければと思う必要は全くありません。発表されませんし担任しか読みませんから、その時感じたこと、悩み、受験のことや人間関係のことでも何でも良いのです。作文を書き終わるまでは人との対話は避け、気を散らすことなく自分の内面を文字に起こすことが大切です。忙しい日々の中で少し立ち止まり、自分がこれからどのように生きていくのか、総合的に考える機会にもなるはずです。」
 創建から1200年以上の歴史を持つ東寺の境内に学校があり、教室の窓から見える五重塔。卒業生らはそんなけ う稀有な環境で学んだことを後にしみじみと感じ、御影供で出逢った言葉や想いが今の自分の根底をなしていることに気付く瞬間があると言います。普段は賑やかで明るい雰囲気が、この日ばかりは厳粛になる。静かに自分と向き合い心を磨き、それぞれが新たな価値観や人生の目標に出逢える場、それが洛南の御影供なのです。


  • 御影供で献奏する吹奏楽部。夏休み前の御影供で中学1年生の生徒が初舞台を踏み、素晴らしい献奏を披露した。


  • 各教室に戻ると用紙にすぐに書き始める生徒たち。自由に書く時もあれば、クラス担任よりお題を与えられる時もある。この作文は担任とのコミュニケーションの場にもなっている。


  • 洛南では「環境が心をつくる」とされ、身だしなみを整えること、掃除、挨拶が励行されている。学校生活の中でも一礼や黙想等が取り入れられ、生徒たちの心は自然と高められる。

その時、その場で感じたことを自分の言葉で紡ぐことの大切さ

私語を一切せず講堂へと入場する生徒たち。全員が揃うまでは着席し静かに待つ。午前10時に御影供は始まり、生徒会代表による献花・献灯・献供・献茶・献香、校長の焼香、全員での三帰依文(さんきえもん)斉唱などが粛々と行われていく。その後、校長による講話、吹奏楽部献奏と続く。この日の講話では、アメリカの大リーグで活躍する大谷翔平選手の話題等が取り上げられ、なぜ大谷選手は人を惹きつけ愛されるのか、大谷選手と栗山監督との貴重な出会い、また、洛南が大切にしている言葉「歩む道によって決まる」などの話があった。数々の言葉が生徒たちの心に響いていく。