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※2022年11月取材
SPIRITS心の垣根を取り払うオープンハートの精神
松蔭という校名には、松の木蔭で少女たちが学ぶ姿から慎み、清廉、忍耐強さを兼ね備える女性を育てたいという願いが込められている。兵庫県庁の隣にある神戸聖ミカエル教会は松蔭の母教会。学校での入学式・卒業式のほか、感謝の礼拝がこの礼拝堂で行われる。毎年入学式では歓迎の意を込めて在校生から新入生に花が贈られる等、松蔭には教員と生徒、また生徒同士が家族や親友のように心の垣根を取り払うオープンハートの精神が根付いている。
自分だけの価値を見つけ、それぞれの未来へ
松蔭は、神戸市のミッションスクールで最も古い歴史を持つ学校であり、中には祖母・母・娘の三代で松蔭卒業生という人も。その伝統校に長年勤め、社会科教諭、入試広報担当、副校長を歴任し、現在は校長として7年目を迎えた浅井宣光先生にお話を伺いました。
「明治25年、決死の覚悟で海を渡った宣教師たちが、当時の日本女子児童らに聖書と英語を教えようという熱い想いを抱いたことにより、松蔭女学校は設立されました。その成り立ちがあるから、英語教育に力を入れているのだよ、と生徒たちには伝えています。創立からの想いや理念が現代の学びにも脈々と受け継がれていることや、学校の歴史を理解した上で学んでもらいたいと思っています。
本校は創立当時より、人とのつながり、人と関わることを非常に大切にしてきた学校です。建学当初には"家族主義"という言葉が掲げられ、学生を娘のように妹のように慈しみ、つながろうという気風がありました。これは、聖書の教えにある"連なるもの"という精神であり、信仰を同じくした者はイエス様につながっているという考えです。見えなくとも、共にいてくださる。平等に愛されている。聖書を学び、見えない存在に守られていることを感じられる環境が、キリスト教主義学校のすばらしい特長とも言えます。
また松蔭には、"Open Heart, Open Mind(心を開いて、思いを自由にして)"というスクールモットーがあります。第8代校長であるエセル・ヒュースのこの言葉は、現在の松蔭にも生き続けており、教員と生徒は家族や親友のように心の垣根を取り払い、接しています。学校は集団対先生というイメージですが、生徒にとっては、1対1の関係性です。私も生徒一人ひとりとの関係性を大切したいと思い、毎朝、正門で生徒を迎え、挨拶や言葉を交わすなど、生徒たちとの接点をたくさん持つように心がけています。校長室のドアも常にオープンにしていて、科目や進路の相談、雑談など気軽に訪れてくれる子もいます。生徒たちにも、心を開いて他者を受け入れ、人と関わってもらいたい。人とつながることの大切さを実感して卒業して欲しいと願ってます。
生徒たちの中には、見るからに原石の塊だと思われる子がいます。そして、未だ自分の原石に気付かず、自信もない、いわゆる普通の子もいます。その普通の子をいかにして成長させるか、私は常に挑んでいます。そもそも本来の教育とは、人を選ばず、ありのままの子を教育するもののはず。その教育の在り方を、松蔭は持ち続けたい。ぜひ、ありのままで入学してほしいと願います。そのうえで、松蔭では「生きる意味」や「そのままの自分としての価値」を見出せる場所として様々な場を用意しています。6年間のうちで、成長のペース、動き出すタイミングは人それぞれ異なります。入学時にはいかにもおとなしいタイプに見えた子が、高校で生徒会に立候補して堂々と演説をし、こちらが驚く変化を見せてくれることもあります。もともと女子は、五感が優れている子が多く、英語や国語などの語学、コミュニケーション能力にも長けています。松蔭では昨今、環境問題解決に取り組むブルーアースプロジェクトをはじめ、SDGsへの取り組みで関大とのパートナー提携を結ぶなど、外部との活動も盛んに行っています。これからも生徒たちの居場所を作り、視野を広げ、動きだすチャンスを創り出す学校であり続けたいと思います。
現代の女子を取り巻く環境は、創立当時とは大きく変わりました。女性も外で働くことが当たり前とな り、資格を取得したり、起業のために経済・法学を学んだり、医歯薬系などへ進学する子も増えました。松蔭でもよりグローバルな進化に向け、中学ではコース改編、高校では新コースを設置。また、社会情勢を注視しつつ、ニュージーランドや韓国などとの海外交流も徐々に再開させていく予定です。私学の良いところは小回りが利くところ。やってみようと思ったことは、試行錯誤を重ねてやってみる。その後、マイナーチェンジするなどブラッシュアップしながら、松蔭をどんどん進化させていければと考えています。制服も素敵ですが(笑)、制服だけではない、松蔭のこれからにご期待ください。」
LESSONS語彙力、論理力、伝達力などを養う松蔭独自の「国語探求」
松蔭では従来の国語の授業とは別に、中学で「国語探求」、高校で「言語探究」の授業を設定している。国語の語彙力、 論理的思考力、論理的表現力を身につけ、国語力・英語力におけるハイレベルな実力定着を目指す。入学時より一人 一台iPadを持ち、グループ学習でも活用する。
中1GS(Global Stream)の『ICT English』授業では、オンラインで世界各国とつながり英語でリサーチを行う。この日のテーマは『割り箸を使うことの是非について』。文化の異なる外国人に対し、割り箸を英語で説明するところから始まる。初めは発話が難しくても、月曜から金曜日まで毎日30分続けることで驚くほど英会話は上達していく。