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防災教育の実際

高1・家庭科「防災ずきん」の製作を通して学ぶこと
武庫川女子大学附属

  • 完成した「防災ずきん」を実際に身に着けてもらった。

  • キットによる製作だが、ワンポイントのアップリケは生徒が独自に工夫してつける。

ものづくりを通して学ぶことはたくさんあります

家庭科教諭
本名 一紗 先生

附属中・高から武庫川女子大学食物栄養学科へ進んで管理栄養士の資格を取得し、卒業後3年間は病院で勤務していた本名先生。母校の教壇に立って5年となる。

「『防災ずきん』は全4回の授業時間で製作します。実習の場合、早く仕上がった生徒が同じグループ内で教える立場になって助けてくれます。こうした実習を通して仲間づくりや他者への配慮などを学んでもらえたらと思います。今年からは浴衣づくりにも挑戦します。縫製の技術だけでなく、日本の伝統ある文化を大切にする心をもって、次の世代に伝えてくれると嬉しいです」

  • 家庭科も他教科と同様50分の授業。実習の時間はあっという間に終わる。そこは集中力でカバー。

  • 「防災ずきん」は普段、ホームルームでいすの背もたれ用クッションとして活用する。いざと言う時には素早く頭にかぶって移動する。

  • 生徒たちが作った手芸品の数々。自ら値段をつけて文化部発表会時に販売し、その売り上げを被災地支援に充てているという。これもまたサポートとして一つのあり方だろう。

家庭科には専任教諭が3名、非常勤講師が2名いる同校。家庭科では日々の暮らしにかかわる幅広い内容を学ぶが、「住居」に関する分野では、安全な住まい環境を考える。

今回紹介する「防災ずきん製作」もその一環である。技術家庭科の先生方が東日本大震災のボランティアに参加し、その様子を目の当たりにしてから、東北への支援をできないかと考えたのが、生徒たちによる手芸品の展示即売。同校では毎年、生徒の代表が被災地を訪れ、文化部発表会時に販売した物品の収益を寄付するという形を継続している。

まさに生徒たちにとって、被災地への思いを留める活動となっている。

学校教育の中でどう取り組むか 防災教育の実際――

7月中旬に行われた防災訓練の様子。生徒たちは自作の「防災ずきん」をかぶって屋上に避難する。

文部科学省の「防災教育支援に関する懇談会中間とりまとめ(案)」(平成19年)では、学校での防災教育について、次のように記されている。【学校における防災教育は、現行の学習指導要領の下で、理科、社会、体育・保健体育等の教科教育や特別活動の一環として行われており、また「総合的な学習の時間」等を活用した取り組みもなされている。特に、地震や津波等の大規模自然災害の被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域の学校を中心として、特徴的で、かつ優れた事例が見られる。】

1995年の阪神淡路大震災以降、兵庫県では、震災の教訓を生かした新たな防災教育として様々な教育プランを提示しており、それらを専門的に学ぶ場として、兵庫県立舞子高等学校に環境防災科を設置。以来、防災教育として先進的な取り組みを行っている。私学では、関西大学高槻ミューズキャンパスに社会安全学部社会安全研究科が設置され、併設されている高等部には安全科学科を設置。普通教科のほか総合防災・安全に関する専門科目が開講されている。

実際、防災教育としてカリキュラムを持っている例はまれで、多くの学校では防災の日や阪神淡路大震災の起こった1月17日の前後に講話やイベント、避難訓練等が行われるというケースが多い。

防災教育と一口に言っても、特定の科目があるわけではない。実際には、地震や台風など自然災害の発生メカニズムについて学ぶ理科をはじめ、消防施設や避難場所など地域の安全対策を考える社会科、あるいは危険から身を守るための行動を学ぶ保健体育科など、さまざまな教科活動の中で、防災の要素を取り入れて行われているのが現状と言えるだろう。

東日本大震災による被災以降、私学からは多くの生徒や教師がボランティアとして東北地方の復興をサポートしている。現地で活動する様子をホームページや文化祭の場で発表したり、あるいは日々の礼拝の中で体験談を語ったりする場面も見られる。被災した町でいま何が必要なのかということを在校生どうしの間で共有するわけである。

上で紹介している武庫川女子大学附属中・高は兵庫県西宮市の臨海エリアに位置しているが、頑強な校舎それぞれの屋上には、生徒や教職員が避難できるよう、食料やミネラルウォーター、生活用品などが備蓄されている。