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穏やかな瀬戸内海、岡山県・牛窓の沖あいに浮かぶ無人島・青島。1962(昭和37)年に関西学院の所有となり、現在まで多くの卒業生が島での生活を体験してきた。当初の名称は、「関西学院青島臨海教場」。新制初代中学部長であった矢内正一先生は、ここを「祈りの島」と名付けた。(写真は青島の北側よりドローンで撮影)

 中学部の生徒たちは入学後すぐに、仲間づくりのオリエンテーションとして兵庫県三田市にある関西学院千刈キャンプへと向かいます。学校生活のスタートはいきなりキャビンでの合宿生活で始まり、そして名物行事である「メチャビー」の洗礼を受けるわけです。男子も女子も全身泥まみれになって行うこのラグビー、否応なく素の自分をさらけ出すことになります。こうした特別な体験を共有することで、よそよそしかった他者との距離感はあっという間に縮まり仲間となります。
 中学2年生の夏になると、岡山県の牛窓沖にある関西学院所有の無人島・青島で3泊4日のキャンプが行われます。自分たちの手で草を刈り、サイトを拓いてテントを張り、かまどを作って薪で火をおこす。そうした原初的な生活体験を経て、晴れて「関学生」となるのです。
 日々の研鑽を通じて心身を鍛え上げることは、同校の教育の大きな柱となっています。

CHALLENGE ▶ CHANGEを体感無人島での海洋冒険生活!

2024年の青島キャンプは8月2日~5日、8月6日~9日、8月10日~13日と3つの日程に分けて、それぞれのグループが3泊4日で行いました。初日の朝、バスで学校を出発した生徒たちは正午に船で島に入ります。この日は自分たちのテントサイトを作ることがメイン、2日目の朝からいよいよ班活動が本格的に始まりました……。

宮川部長から、生徒たちがどのように青島で過ごすか、
班ごとに行われるアクティビティーの詳細を聞く
小松原代表と橘編集長

 本誌取材スタッフが島に上陸したのは、B日程・2日目の早朝でした。森の中で行われる朝拝に始まり、旗揚げのセレモニーを行います。そこで自己紹介とあいさつをし、キャンパーたちに受け入れてもらいました。
 朝9時、食料や水を運ぶ船の定期便が到着すると、生徒や大学生のキャンプリーダーたちの手によって荷物運びが行われます。水は桟橋に備えられたポンプで矢内コテージ(本部棟)近くにある貯水槽に貯められます。
 さあ、いよいよ午前中の班活動がスタート。自然観察や開拓作業、清掃活動、島内探検といった陸のプログラムと、カッターやシーカヤック、ディンギーなどで海洋に出たり、遊泳や釣り、岩礁のある象ケ鼻での観察、いかだを作ったりと海のプログラムも充実。これらはすべて班ごとで自主的に行われます。生徒たちの安全をサポートする先生方の多くが船舶免許を持ち、看護師も常駐。本土とすぐに行き来できる体制がとられています。
 午後からの班活動では、カッターで青島一周を行うグループに密着しました。我々は長年にわたり関学のキャンプを支える地元の中山省三船長の船から撮影を行います。並走しながら潮の流れや岩礁などを見てコース取りをアドバイスする船長。生徒たちに声をかけ励ます先生方やキャンプリーダーたち。関西学院の青島キャンプが多くの方々の手によって支えられていることを痛感します。様々なチャレンジによって、その後の気持ちの持ち方や行動を前向きにチェンジさせる生徒たち。彼らの健全な心身が育まれる過程を目の当たりにしました。


  • 朝7時に野外の「グリーンチャペル」で行われる朝拝。祈りのある暮らしは健全な心を育む。

牛窓港から、いざ青島へ

牛窓港の桟橋に、中学部長・宮川裕隆先生と朝6時に待ち合わせ。
学院所有の船で青島に向かう小松原代表と橘編集長。旗揚げの後、
本部棟である「矢内コテージ」では、一日のスケジュールについて
打ち合わせが行われる。生徒たちの活動に合わせて教員を
配置する指示を出すのは飛川先生(写真左上)。
ホワイトボードの上に掲げられた扁額「青嶋之祈」は、
新制初代中学部長・矢内正一先生の揮毫。

日本のエーゲ海と呼ばれる牛窓は、瀬戸内ならではの風光と夕景の美しさで知られる。牛窓港の眼前には人々が暮らす前島が横たわり、その南側に青島は位置する。この無人島には井戸や水道施設がないため、必要な水は船で運び島の貯水槽に貯められる。

無人島での生活

島での一日は、朝拝後に行われる旗揚げのセレモニーから始まる。テントは班別に男女それぞれで入口の向きを変えて設置。テント付近の土を掘り、夕食づくり用のかまども作る。

青島で得るもの

キャンプの歴史は一世紀にも及び、青島においても65年近い伝統を持つ。寝食を共にする中では互いの本性が現れ、そこでこそ豊かな人間性が育まれるという強い信念がある。

関西学院で脈々と受け継がれてきた青島キャンプの意義とは何か

日能研関西
代表 小松原健裕

 キャンプ2日目の朝、青島に到着してすぐの印象は、先生方と生徒たちとの熱量の違いでした。無人島での集団行動では、個人の勝手な行動が周囲の安全を脅かします。また、自分たちが行動しなければ食事も何も手に入らない状況なので、先生方の指導も自然と厳しくなります。一方で生徒たちの気持ちもわかります。猛暑の中、慣れないテントで寝て、目覚めると朝から外は暑い。「だるい。暑い。」口には出さないが、生徒の表情が物語っています。そこを上手に卒業生であるキャンプリーダーたちが引っ張っていきます。自分たちの経験も話をして生徒たちを励ましたり、島の生活で大切なルールを教えたり、一緒に活動することで生徒たちがみるみるうちに元気になっていきます。午前中は元気がなかった生徒たちも、日中の班別のアクティビティーを経て、夕方には自発的に行動するようになり笑顔も増えてきました。
 日常生活ではできない体験をできることが学校の課外活動の大きな意義です。リスクを避ける今のご時世でこのような活動ができるのが、関西学院の魅力と感じます。代々積み上げてきた歴史、そして先生方の情熱。あらためて体験の価値、関学の魅力を感じた一日でした。

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