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2023年11月 取材

2022年に創立100周年を迎えた同校。四天王寺といえば、難関大学への高い合格実績を誇り、医学部医学科への進学率の高い私立女子リーダー校などといったイメージが先行し、さぞかし真面目でおとなしい生徒が多いのだろうと思われがちだ。しかし校内に足を踏み入れれば、そこには10分間の休み時間にも教室を飛び出しバドミントンに興じる姿や、勉学にスポーツに実に個性的な生徒たちが朗らかに笑う姿があり、校内は活気に満ちている。教育においては自習室など学習環境が整い、また豊富な体験の場を有した女子教育に特化した強みを活かした学校であり、4つのコースが異彩を放つ。なにより、仏教の根本にある「弱い人に寄り添う」という考えのもと、高い能力をもって自らを活かす道を模索する人を育成する、学力向上はもとより人間教育に最も力を入れている学校なのだ。

LOCATION1400年の歴史を持つ和宗総本山 四天王寺の境内が校地

朱色が映える堂々とした風格を持つ同校の正門。その荘厳な門構えから凛とした同校の品格がうかがえる。寺の境内という静かな環境は学習にも適している。

学校は聖徳太子によって建立された日本最古の寺、四天王寺の鳥居をくぐった境内にあり、校内からは優美な五重塔を望むことができる。生徒たちは登下校時、正門に立つ慈母観音菩薩像に向かって合掌と礼拝を行い、毎日の朝礼でも仏教聖歌を斉唱するなど、日常の中には仏教的情操が息づいている。
大阪メトロ「四天王寺前夕陽ヶ丘駅」から徒歩5分、JR天王寺駅からも徒歩10分という好立地に加え、関西エリア女子トップ校としての地位を実現する伝統ある女子教育を求め、他県遠方から多くの生徒がこの学び舎に集う。

私立女子校にしかできない女子教育とは

校長の中川章治先生は1989年に同校の国語教師となり、2014年より入試担当部長、2020年からは高校教頭を務め、2023年春、現在の校長職に就いた。取材の日は日能研関西・小松原健裕代表も同行。小松原代表にとっても関心の高い四天王寺の女子教育などについて、教師歴34年の中川校長に伺った。

小松原 貴校は2022年に創立100周年を迎えられました。貴校の歩みについて教えてください。

中川 本校は初代校主・吉田源應大僧正が大正11年(1922年)に聖徳太子の志を受け継ぐ教育実践の場として設立された学校です。 開校以来、聖徳太子の「和のご精神」を礎に、生徒一人ひとりの個性と能力を伸長し、自らを律する豊かな知性と高い志を併せ持つ、慈悲の心に満ちた女性の育成を実践してきました。

小松原 聖徳太子をルーツにもち、お寺の境内に学校があるという珍しい学校ですよね。仏教教育にはどのようなものがありますか。

中川 中1から高3まで仏教の時間が週1時間、また毎月22日には聖徳太子の御徳を偲び四天王寺境内太子殿に参詣します。あとは仏教関係者による講演などを行い、感謝の気持ちや他人のために尽くす利他の精神を学びます。

小松原 貴校の4つのコースからなる、女子教育の特徴について教えてください。

中川 「医志コース」は聖徳太子の精神である「人を救う慈悲救済の心」を具現化したコースです。学力の向上のみにとどまらず、医療従事者を志すマインドの涵養にも力を入れています。学業成績が優秀だから医師になるのではなく、私立女子校にしかできない女子教育とは医師という職業の役割や倫理観を理解した上で医師を目指してほしいと思っています。そのため、学校に隣接しているわが校系列の「四天王寺病院」や重症心身障害児(者)施設「四天王寺やわらぎ苑」への訪問体験を行い、医療従事者として働く姿をま目の当たりにすることで、理屈ではなくそこで働く意義や学びを得ます。この訪問体験を始める前は少なからず心配をします。生徒たちが病院や重度障害者施設での現実を見ることで、ショックを受けるのではないかと。しかしその現実を前に、より使命感に燃える生徒たちを見て、頼もしく感じました。
他に最難関国公立大学理系・文系をめざす「英数Sコース」・「英数コース」、世界を目標に据えた「文化・スポーツコース」があります。これらは、偏差値で輪切りしたものではなく、どのコースにも優秀な子がたくさんいて、それぞれのコースは特徴をもっています。互いに意識し、優劣なく高め合っているという印象です。それゆえ、卒業生は医療だけではなく、バラエティに富んだ分野で活躍しています。彼女たちはやり抜く力を持っている。それは中学受験という決して楽ではない経験を乗り越えた成功体験がもたらしているのだと思います。中学受験を経てそのまま中学時代に女子は伸びると私は考えているんです。

校長
中川章治先生

小松原 中川先生は長年女子教育に携わっておられますが、性差の点で言えばいわゆる学習指導要領プログラムに見る日本の公立教育はまだまだ男子の成長に合わせた教育体系になっているように思います。その点はいかがですか。

中川 そうですね。女子は男子のように最後にグッと伸びるというよりは、コツコツ積み重ねる持久力戦が得意です。本来は理数系ができるのに男子寄りの教育体系によって女子の能力が潰されてしまっているのではないかと思います。本校では入学後から密度の濃いカリキュラムに沿って、6年間学習を継続させます。それにより理系科目をあきらめさせることなく、約7割の生徒が理系大学に進学していきます。女子には女子の成長に合わせた教育体系があり、私立の女子校でなければできない教育があるんです。また、女子は周りを見ることができ、誰かを励まして支える女子特有のリーダーシップ力があります。そして、他者を意識することで自らをも伸ばすという特性をもっています。女子教育に特化し互いに高め合える本校で学び、社会に出た時には他者のために自らを活かす人になってもらいたいと願っています。

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