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これからの時代において活躍できる人物像として同校が大切にしているのは、基礎的な学力をベースとして、その上に感性を磨き、多様な経験を積むこと。同校の教育プログラムの中でも特に評価が高いのが、独自の取り組みである「キャリア・フロンティア」である。

2022年09月撮影取材

「考えるを、学ぶ」、 そのスローガンの真意

校長
大森茂樹 先生

 難関進学校をはじめ、個性ある私立中高一貫校で、進路指導部長や教頭などを歴任してきた大森茂樹先生。校長として三年目、いま何を想うのか伺ってみることに。  「私がこの学校に着任する前、学校の沿革をじっくり読んで、創設者がなぜこの時期に、この場所に学校を作ったのかということを調べました。
 本校は1963年に、この姫路の地に創立されました。高度経済成長期にあって子どもの数が増え、地元公立高校だけでは生徒があふれてしまう状況となったこともあり、姫路市からの要請を受けて、東洋大学が高校を作ったわけです。  創立50周年を機に2014年に中学を開校し、現在に至ります。『キャリア・フロンティア』など独自の取り組みを通じて、一人ひとりの良い所を伸ばしていこうと意識してきました。それでも振り返ると、学校として生徒たちを枠にはめすぎているのではないかという想いがあります。『考えるを、学ぶ』というスローガンを抱えながら、期待するあまり、逆に課題を多く与えすぎていたのではないかと。そこで教員には、私が校長になった時に、授業についても学校行事についても、『生徒たち自身に考えるための時間を与えて行こう』という意識を共有しました。
 中学の開校から少しずつ国公立大学への進学者も増えてきましたが、これまでは一学年60名(2クラス)という定員で、学力を問わず同じコースとして分割してきました。ところが実際に授業をしていると、どうしても学力差が大きく開いてしまいます。そこで、2022年度からは募集定員を90名と枠を広げ、学力上位層の生徒が在籍する『一貫SPコース』(一クラス)と、『一貫SAコース』(2クラス)という新コース体制にしました。ただ、『一貫SPコース』のクラス人数は限定していません。学年進級時には学力到達度テストを実施して、クラスの入れ替えも行いますから、みんなが高い志を持って授業に臨んでほしいと思っています。
 私の経験として、生徒たちというのは生徒同士の切磋琢磨の中で成長してゆくものです。得意なことや不得意なことは人それぞれですが、数学のできる子ができない子を教えたり、技術家庭で工具を扱うのが上手な子が、苦手な子のサポートをしていたり、そうした中で自然とみんなができるようになっていく、これは個別指導やオンラインでの学習では無理。学校という集団教育の場だからこそできることなんです。
 世の中は『価値観の多様性』と言いながら、勉強ができる・できないということや、良い大学かそうでないか、と言ったようにステレオタイプに物事を考える大人はまだまだ多いのが実情です。少なくとも、子どもたちが最も信頼を寄せる親や教師は、型や枠にはめるのではなく、その子の特性を見つけてあげようと強く意識する必要があります。そのためには、本校の教員にも高い学識と幅広い見識が求められます。心して取り組んでいきたいと思います。教師が自分の担当する教科の面白さをワクワクしながら本気で語ったら、生徒たちは自ずとついてきてくれますから。
 今年はおかげさまで、受験生が増えました。高校からの入学者も大幅に増加し、活気が出てきました。中高一貫生には、様々な体験活動を通じて学園生活の軸となってくれることを願っています。東洋大姫路に行けば、わが子の良いところを見つけて伸ばしてくれるんじゃないか、そんな風に感じてもらえたら嬉しいですね。」

教頭
黒河潤二 先生

 同校独自の取り組みである「キャリア・フロンティア」を形作るうえで、中心的な存在を担う教頭・黒河潤二先生に、生徒たちの将来像について伺ってみた。  「自分の興味や関心を広げていくことで、生徒自身が自分の強みを持つということが大切だと思います。  生徒たちには、自分の長所と短所を三つずつ挙げるようによく言っています。まず自己分析からです。人というのは、短所ならば克服しようとするものですが、長所を伸ばすということに案外意識が向いていないのではないかと思います。もし、得意なことを知識と経験を積んで大きく太くし、それが大学での研究や将来の仕事に結びついたとしたらすごいことですし、幸せなことですよね。自分自身を理解し、特性を発見することが、『キャリア・フロンティア』の一番のねらいです。探究型の学びの中で、プログラムに『震災学習』や『防災ワークショップ』などがあるのはとても珍しいと思いますが、自助や共助の精神、命の尊厳をしっかりと考えることは、これから長い人生を生きていく上での根本になると考えています。  調べて、まとめて、発表するという過程を何度も繰り返すことで、生徒たちは6年経った時にプレゼンテーションの能力が飛躍的に上がっていることを実感します。中3では日本の伝統文化を京都に行って学びますが、ポスターセッションで優秀だった生徒がいます。いわゆる偏差値はそれほど高い生徒ではありませんでしたが、国立大学の推薦入試で合格しました。こういうことは普通に起こり得るんです。」

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