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2022年4月取材
SPIRITS他者の痛みを思いやれる美しい人間性と、その痛みを解決する逞しい知力をあわせもった人間に
プール学院は近代日本の黎明期である1879年、英国国教会所属の宣教団体により、キリスト教を基軸とする宗教的情操と高い文化的教養を身につけるべく創立され今日に至る。ここ数年は、学院の存続をかけ、プール学院大の学校法人桃山学院への設置者変更、プール学院短期大の閉学を決断し、2021年4月より中学校及び高等学校のみを有する学校法人として新たな歩みを始めた。
学院の母体である聖公会共同体は「多様性の一致」(Unity of Diversity)を掲げ、これらの実現を目指して歩んでいる。本校も多様性の尊重と性差を超えた「共に生きる」理念が求められる時代に応え、教育のさらなる拡充を図り、「21世紀に輝くプール学院」へ着実に進化している。
*校長インタビュー*
女子校・共学校での経験を経て、赴任した校長先生が語る、名門プール学院復活への熱い想い
本校に入学してくる生徒たちの得意なことは、勉強・スポーツ・歌がうまい・人にやさしいなど、人それぞれですが、本校ではどの生徒も、自分にふさわしい居場所・出番を見つけることが可能な環境が整っています。よく「どんな生徒を育てたいですか」と聞かれますが、一言でいうと将来「あてにされる」人になってほしいと思っています。家族からでも、近所からでも、会社からでも、社会からでも、世界からでも(笑)。そのためには、美しい心と専門的な知識が必要です。プール学院が「めざす人間像」は、人間性と知力を兼ね備えた人です。
本校では、中2~高2の間に、希望者はタイのボランティアツアーに参加できます。ある生徒が、中3の時に、この行事に参加し、貧しい地域にある姉妹校で、カルチャーショックを受け、帰国後は、ホストファミリーを名乗り出てくれました。その後、日本とタイの架け橋になり、貧困問題を解決したい、そのためには、ボランティアではなく、外交官になって役割を果たしたいという想いを抱き、現在、大阪大学外国語学部タイ語学科へ進学、勉学に励んでいます。
「夢を実現する力を養います」という学校もありますが、学校というのはその前段階として「夢を見る力を養います」と伝えたいのです。英語ができる子とできない子とでは見る夢は違うし、数学が得意な子と苦手な子とでは見る夢が違うし、クラブに一生懸命とりくんだ子とそうでない子とでは見ることのできる夢は違います。中1で入学後、生徒たちの夢は変わっていくもので、学校はその夢を養う力、気づきを与える場所と考えています。
コロナ禍ではありますが、今年4月カナダへの1年間の留学へ4名の生徒が日本を発ちました。イギリスでは入国基準が緩和されたので、この夏休みに1ヶ月の短期留学を実施する予定です。たいへんな時期ではあるのですが、子どもたちに気づきを与える貴重な体験となるはずです。
いまは、便利・簡単・手軽が持てはやされる時代ですが、不便・複雑・面倒な仕掛けが必要と考えています。中学でいろんな体験ができる、生徒・保護者ともに満足いくプログラムをさらに磨いて、プール学院へ中学から入学していただく意義をどんどん高めていきたいと考えています。
以前、私自身が共学校の校長を務めていたことから、プール学院の共学化が噂されることがありました。しかし、多感な思春期を、同性だけで過ごすことで異性の目を気にせず、のびのびと自分の個性を伸ばせる女子校に価値があると考えています。私は、思春期の中高時代を男子校で育ち、大学卒業後、女子校で25年、さらに共学校で17年、教育に携わってまいりました。多くの学校が共学化している流れは正直さびしいものを感じています。ジェンダーフリーの時代だからこそ、男子校・女子校・共学校それぞれの魅力を提示することが重要と考えており、プール学院を女子名門校として復活させるべく奮闘してまいります。