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撮影/岩井 進 取材・文/橘 雅康(本誌編集長) 同行/今井康裕(日能研関西本部)
混迷の時代だからこそ必要な、「学校」という名の家
サレジオ会創立者であるドン・ボスコ(1815〜1888)は、「青少年の友」と呼ばれている。2歳になる前に父親を急病で亡くし、貧しさの中で学校に通うことができなかったという。後に司祭となった彼は、青少年教育の必要性を強く願 い、彼らのために生きることを誓った。多くの若者を負の体験から救うこと。さらに青少年が真理の探究を経験し、想像力を発揮するためには、積極的に参加する共同体が必要だと考え、彼らを温かく迎える「家」としての学校を作った。
現在、日本国内には大阪星光学院のほか、サレジオ学院(東京)・サレジオ高専(東京)・日向学院(宮崎)などのサレジアン・スクールがあるが、それらすべてにそうした共通の教育理念が込められている。ファミリー的な雰囲気が漂うのも納得できるだろう。
「学問探究の場として、様々な文化的な繋がりのもとでいろんな体験ができる土壌を作っていきたい」と語るのは教頭・宮本浩司先生。その一つの取り組みが国際理解教育のさらなる充実だろう。これまでもオーストラリアへの海外研修などがあったが、新たに高2の希望者を対象とした「ボストン研修」を作った。マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学などで学べる機会で、世界の最先端研究を肌で感じるものでもある。もちろん日々の学校生活においても、ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業を増やすなど、細やかな配慮が行われている。
「世の光であれ」というスクールモットーは、たんに難関の大学に合格することや、社会的に高い地位をめざすことではない。自分の利益や名誉を超えたところで、他者のために生きることこそが幸せだと実感できること、それが同校のめざす世を照らす「光」なのだ。
星光の校風を形づくる精神、アッシステンツァ
「本校の教育を一言で表すなら『アッシステンツァ』です。これは、共に寄り添い助け合いながら生きることを意味しています。子どもたちが力強く生きていくうえで必要なことは何でしょうか。私たちは生活力をつけることだと思っています。そのうえで、自分にできることをしっかり見つけ、世の中に貢献できる人になってほしいと考えています。
サレジオ会の学校には合宿所を持っているところが多く、そこには家庭的な関わり、親しさの中で教育を実践するというドン・ボスコの理念があります。本校も校内施設と二つの校外施設を持っています」
そう語るのは校長・鈴木英史神父(写真)。本誌では、黒姫星光山荘・南部学舎両方の様子を取材したことがあるが、生徒たちの生き生きとした取り組みはもちろん、サポートを行う先生方や学舎管理・食事を担当するスタッフの皆さん、後輩たちの活動を献身的に支えるOBたちの活躍が印象深かったことを覚えている。
以前、鈴木神父が行う「倫理」(高3)の授業で、人類の言葉の使用は、脳の発達や発声に必要な器官の進化、集団で狩猟をおこなうために育まれたコミュニケーション能力によるものだと伺ったことがある。同校が実践する子どもたちの成長に合わせた共同生活のプログラムは、人としての感覚すべてを刺激しながら、さらなる高みを目ざすための大切な舞台装置だと痛感した。