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取材・文/橘 雅康 撮影/岩井 進
先行き不透明な時代に、清風が目ざす道とは
戦前、学園創設者の平岡宕峯は50歳くらいまで企業のコンサルタントなどを生業にしていました。敗戦後はアメリカの占領下に敷かれるということで、日本の教育の行く末を心配し、それまでに蓄えた財を投げ打って学校を作ります。大阪小学校の一教室を借りての小さなスタートでした。校庭の一角に伊勢神宮を拝む遥拝所がありましたが、その小学校の校長の子ども二人は戦争で亡くなってしまったんですね。その先生は神仏を信じることはできないと、遥拝所を壊して薪にしようとしたそうです。宕峯は「それは良くない」と場所を移そうとしました。ちょうどその頃、よそに間借りした学校は数か月後に別の校地を確保できない場合、廃校にするというお達しがGHQ(連合国総司令部)からあり、宕峯が高野山奥の院に祈願すると、伊勢神宮に50日間参るようお告げを聞いたそうです。お参りを続けながら校地を探すという毎日の繰り返しでしたが、結願の50日目に見つかった土地が大阪市天王寺区石ケ辻町、現校地なんです。伊勢神宮の遥拝所を移したのもここで、 いまでも校舎屋上に清風神社としてまつっています。創設者はもともと高野山で真言宗の修業をしていましたから、仏教的な情操をベースに学園を築きました。校長は私で三代目となりますが、昨今ますます情操教育が求められていると痛感しています。最近はインターネット環境が広まり、子どももスマートフォンを持つ時代です。一日に3時間以上スマホをしたり、深夜0時を越えても触っていると答えた率が50〜60%に達しているという研究結果もあるそうです。良いもの悪いもの、ありとあらゆる情報が洪水のようにあふれていますが、それらに溺れないためには、しっかり情報を取捨選択できる、振り回されない自分を確立しなければなりません。自らを律することのできる自制心があるかないかというのは、これからの人生を左右する大きな鍵だと感じています。本校では「福の神コース」と言っていますが、自分の様々な能力を高めていくことで多くの人の役に立つということが、 たちの学校の考え方です。社会に出てスポットライトを浴びる立場になればなるほど、何でも赤裸々にさらされてしまう時代です。ごまかしのきかない本物とは何かということを常に真剣に考える生徒であってほしいと思っています。本物になるためには「自覚」と「行動」が求められますね。まずは、自分をどう育てていくかという目標を持つことから始めなければなりません。本校では毎日全校生徒が集まって朝礼をするのが恒例です。昨今の時代感覚からすれば古いと思われる方があるかもしれませんが、コミュニケーション能力が低下していると言われる今だからこそ、直接生徒たちに話しかけて叱咤激励することが大切だと考えています。昨今、若い世代を無気力・無関心と形容するむきもありますが、私はそうは思いません。何でも頭ごなしに命令したり指示したりするのではなく、なぜそれが必要なのか、なぜ今それをしないといけないのかと物事を論理的に説明すれば、彼ら は理解し、必ず満願成就に向けて取り組むことができます。 昨夏、ボート部がインターハイで優勝しました。中学から継続し高校でもボートを続けてきた部員たちも大勢いて、その中には理Ⅲコースの生徒もいます。これは不断の努力によって大輪の花を咲かせた一例です。もちろん運動部でも文化部でも構いません。中学受験で入学した子どもたちが躊躇することなくアクティブにチャレンジできる環境を今後も作っていきたいと思います。ぜひ期待してください。