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素晴らしい教育環境ができあがった背景とは
築地塀のある正門からキャンパス内に一歩足を踏み入れ校舎への緩やかなスロープを上がると、正面に甍(いらか)の美しい転心殿があり、抜けるような青空が広がっている。あらためて、学問寺としてのルーツを持つ東大寺の伝統を脈々と受け継ぎ、アカデミックな校風がここに息づいていることを実感する。
「私が本校に勤めた時はまだ東大寺の境内、南大門の脇に校舎がありました。運慶・快慶の作として知られる金剛力士像、仁王さんがある南大門です。昔は門の屋根瓦の上に生徒たちがボールを投げて、落ちてくるのを取るという遊びをしていましたものです。いまならすぐに警備員が飛んでやってきますよ(笑)。
当時の大らかさが現代にあてはまるとは思いませんが、それでも生徒たちには、大切な思春期を伸び伸びと過ごす環境が必要だと思います。お寺の境内では広いグラウンドも取れませんし、その頃から何度か移転の話はありました。
1986(昭和61)年に奈良市山陵町の現校地にキャンパスを移転することになりましたが、もともとここは山林で雑木林が広がっていたんです。住宅地としてではなく本校の校舎を建築するために造成され、落成後に周辺地域が風致地区の指定を受けたことによって、これ以上ほかの開発は出来ません。いまなお本校が木々の緑に抱かれるようにあるのはそのためです。
学校が東大寺境内にあった頃は、校門から入れば左手に本館と中学棟が一緒にあり、右側に理科施設と高校棟がありました。高校棟は外廊下になっていて吹きさらしの状態でしたが、昼休みなどには中学生たちが中庭で遊ぶ様子を高校生たちが上から見ているような和やかな雰囲気がありました。2015(平成27)年に中庭に『サンガディ・スクエア』を作りましたが、まさに旧校舎で生徒たちみんなが集っていたイメージが現代に再現されているんですよ。」(校長・森 宏志先生)
LESSONすべての授業で見られた先生と生徒の問答
同校に来るたびに思うのは、先生と生徒たちとの厚い信頼関係。それは授業中のやり取りを見ればすぐにわかる。自学自習のスタイルを確立することが目標で、在学中に塾や予備校に通う生徒はそれほど多くはない。もともと東大や京大、医学部を含め国公立大学志向の強い生徒たちだが、進路別の特別なコース編成がなくても、普段の授業で使われる独自教材では、その都度必要な大学入試問題が採り入れられている。最難関の進学校だが、中学では春休みや夏休み期間には成績不振の生徒を対象に補習も行われ、高校では希望者を対象とした講座もある。退職教員を活用した学習支援の制度もあり、縁を大切にした同校らしい取り組みの一つだ。
SCIENCE EDUCATION好奇心と探究心から「行動」へ。鳥の目と虫の目を持つ生徒たち
もし、最難関進学校のイメージを、大学入試の問題をガンガン解かせている教師主導の管理主義的なものとしてとらえているとすれば、そういった思い込みは早く捨ててしまった方がいい。東大寺学園をはじめ有名最難関校の多くは、五感を使った実体験をとても大切にしている。たとえば同校の場合、中学の「理科」では2~3回の授業のうち1回は実験・観察に充てられるという。薬品を扱う時や実験を行う時の手さばきなどは真剣そのものだが、それでも生徒たちは終始リラックスして授業に臨んでいるように見える。物事に集中する時と俯瞰して広い視野で見渡す時のバランスがとてもいいように感じた。
PICK UP 学校紹介イベントでも大活躍の「科学部」
案内してくれた本郷教頭先生が「いつも快く協力してくれるんですよ」と絶賛するのが科学部の面々。化学系のグループは「アンモニア噴水」を、生物系のグループは自分たちで仕上げた骨格標本を見せてくれた。外では、マイマイカブリとかたつむりを捕獲する生徒たちの姿もあった。