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特別企画 神戸タータン物語
~開港150年を迎えた神戸の街に誕生した、オリジナル・タータンの話~
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取材・文/橘 雅康
撮影/岩井 進 協力/神戸タータン協議会
神戸発、未来ヘーーー 街づくりのアイデア
タータンとは、縦と横の色と配列が同じ正方形のチェック柄で、本場スコットランドの公的機関である「スコットランド・タータン登記所」に申請し、登録されたものだけがその名を名乗ることを許されると言われている。
「神戸タータン」もその一つで、みなと街・神戸の海の「青」を ベース地として、街に多く見られる建築物や真珠の「白」、ポートタワーや神戸大橋の「赤」、後ろに連なる六甲連山の「緑」などを配して作られている。いまや神戸を象微す るイメージブランドとして定着した「神戸タータン」。その生みの親である石田原 弘さん(神戸タータン協議会会長)に、開発に関わるエピソードをうかがったーーー
街をイメージしたオリジナルのデザイン、神戸タータンが誕生
神戸タータン協議会 会長
石田原 弘さん
有限会社石田洋服店代表取締役。現在、 神戸松蔭女子学院大学非常勤講師を務める
私の祖父は、大阪の船場でテーラーをしていました。父親は服地を販売する会社を経営しており、私自身は大学を卒業後、ヨーロッパ留学、商社勤務を経て、そこに入りました。当時から会社は縫製工場も擁していて、洋服の本場イタリアと同じレベルの縫製技術を持っていたんです。父が亡くなった後に会社は廃業しましたが、縫製工場は引き継いでいまに至ります。
六甲アイランドにある神戸ファッションマート内に「石田洋服店」として開業したのが2000年のことなんですが、本当に神戸の街に救われたという思いがあるんです。
近代洋服発祥の地として知られていることもあり、神戸はおしゃれな街というイメージがありますね。明治期に開港されましたが、横浜はアメリカ航路、神戸はヨーロッパ航路が中心ということもあって、洋装の文化とともに縫製技術なども入ってきました。この時期に日本初と言われる紳士服のテーラーも誕生し、外国人も大勢住むようになり、神戸は異国情緒が漂う街になっていきます。
いま、三宮から元町にかけてのセンター街を眺めてみると、地元のお店はめっきり数が減りました。商売ということだけで考えると、自分のところで商うより、店舗を貸して得る家賃収入の方が遥かに儲かります。 街というのは発展すればするほど、結果としてナショナルブランドがどんどん入ってくることになり、地元の商店が減っていくというのは宿命なんです。ただ、そうした中で神戸の街を何かシンボル化したもので活性化できないかと考えていました。それが「タータン」だったんです。
産官学が一体となり街づくりを仕掛けるブランドファクター
外に自けて発信することも大切なんですが、実は神戸市民のソフトパワーになれぱという思いの方がもっと強くあります。一時、企業や地方自治体など、どこもかしこも「ゆるキャラ」を作るのが流行りましたね. そういうものではなく、ここに住んでいる人、働く人、学んでいる人たちみんなが一緒に神戸の街を誇りに思えるような、共通のものがあればと考えたんです。
神戸のイメージはある意味決まっていて、タータンのデザインも海の青を基調にしています。実はこれ、もともとは私の店の商品として開発したものなんです。ちょうど神戸が開港150年を迎え、イペントなどが企画されていたこともありましたし、本来、海外の港には西洋式の紋章があるものなんですが、神戸にはなかったということもあって、このタータンと紋章のデザインを提案しました。ただ、行政が中心になるとどうしてもデザインを公募することや、議会の承認が必要になるなど煩雑なことも多くありましたから、民間で「神戸タータン協議会」を立ち上げ、商店街や事業所などに共通デザインとして広く使ってもらえるようにしました。人気のゆるキャラ「ふなっしー」は、千葉県船橋市の非公認キャラクターで、市は頑なに認めていませんが、神戸市はPR活動の一環としてタータンのデザインをバンパン活用しています。 フレキシビリティーというのでしょうか、本当柔軟ですよね(笑)。
現在、この「神戸タータン」のデザインを軸として約150 のアイテムが展開されています。協議会に所属する企業が販売している商品には、衣料品や文房具、菓子類、包装紙やショッピングバッグなど多岐にわたりますが、ユニークなところでは神戸マラソンの完走メダルのリポンや神戸市の婚姻届などにも採用されています。「神戸タータン」を広めていくにあたり、エンジンは私たち産業界が、始動するためのセルモーターやアクセルは行政や教育機関などが担っています。産官学が一体となる取り組みで、これからも神戸の街の魅力を発信し続けていきたいと思っています。
異国情緒あふれる神戸の衝で生まれた私学も
神戸三宮から元町にかけて旧外国人居留地がある。明治の開港によって交易に関する商人を始めキリスト教伝道のための宣教師など、多くの外国人が来日した。関西学院や啓明学院、神戸女学院といったミッションスクールもここをルーツとして明治期に創設された。現在、神戸市街を眺めることのできる六甲山系の中腹には甲南女子・親和・六甲学院・神戸海星女子学院・松蔭・神戸龍谷・神戸山手女子・須磨学園など私立中高一貫校がある。
本誌編集部のある日能研関西本部(神戸市中央区江戸町)も旧外国人届留地に位置しており、海側から山手に至るまで、周辺にはいまも石造りの洋館が数多く点在している。国の登録有形文化財に指定されている建築物も多く、街の風情を感じたいと訪れる方も多い。神戸はビーナスブリッジなど高台からの眺望や夜景が有名だが、海から眺める景色もまた違った雰囲気で楽しい
「神戸タータン」を使ったグッズがいっばい
https://www.kobetartan.jp
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神戸タータン協議会事務局を務める、六甲アイランドの石田洋服店には、ネクタイやコサージュなどの商品がズラリ。現在、協議会には多くの企業や学校法人などが加盟している。
石田洋服店
●住所: 神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート1階 ●TEL: 078-864-9701 ●FAX: 078-864-8702 ●営業時間: 10時〜19時(水曜日定休)