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大阪・千里丘陵の開発とともに、初代校長・佐藤一男先生は一つの夢を見る。それは、学力のみならず、人格を高め、師のもとで全人的成長を遂げる厳粛な学びの場の創設だった。壮大な夢は1965(昭和40)年の開校へと結実し、そこから独自のスタイルで行われる新しい教育が始まった。

取材・文/橘 雅康  撮影/岩井 進

校内にただようアカデミズム

コツコツと堅実に積み上げる学力、 そこには学びへの真摯な姿勢が!

中3生が毎年見学に出かける国立民族学博 物館。グループごとに論文を書き上げる中で、 異文化への理解と研究者としての姿勢や方法 を身につけてゆく。大阪大学や国立循環器病 センターなどを始め、近隣の研究機関から講 演で学者を招くことも多い。 写真は、「物理」の授業で演習問題に取り組む高2生たち。指名された生徒は黒板に 式と答えを書くのだが、日頃から慣れているのか板書がとてもうまい。日々の授業を通して、しっかり「表現」することが意識づけられているように思えた。式のある箇所で先生の指摘を受けた女子生徒は、すぐにその場で 解き直して、正解を導き出す。取材を行ったスタッフ全員が惚れ惚れとした瞬間だった。同校には中間や期末といった定期考査がなく、毎朝授業前に20分の小テストを行う。 学期の評価対象となり、年間150回は実施されるという。


  • 化学教室前の廊下には分子モデルの模型や自然科学に関する様々なポス ターが掲示されている

金蘭千里を語る上で、 忘れてはならないキーワード


学校法人金蘭千里学園の理事長も務める校長・ 辻本賢先生

多くの私学教育を眺めた時、金蘭千里ほどポリシーの明確な学校はないのではないだろうかと思えてならない。そこでまず、校長・辻本賢先生に、同校のぶれのない教育スタイルについてあらためて伺ってみた。 「教育の中心に授業がありますが、 創設からの精神として、英国のパブ リックスクールを範としたジェントルマン教育を実現させたという思いがありました。師を仰ぎ、師に感化 を受ける『私塾』と、自主的に学び 鍛える場である『道場』という日本古来の伝統を踏まえて考えられたのが、1クラス 30 名規模でのクラス編成でした。  学校は人を作る場ですから、人間 関係の機軸を何に置くかというのは 本校としての大切な部分となります。 生徒たちに将来の目的を見つけ、社 会に貢献できるよう導く教師は、教 科指導の専門性だけでなく、人間性 が問われます。本校の教育を語る上で重要なキーワードとなるのが、『フェイス・トゥー・フェイス』です。本校では毎朝小テストを行い学習内容がしっかり身についているかをチェックします。ここには、教師と生徒との厚い信頼関係を通じて、 日々生徒を見つめたいという思いが あります。しっかり向き合いながら生徒たちの体調や心の動きまで把握できるか、教師としての力量が問われます。もう一つは『スポーツ』でしょうか。生徒全員にスポーツを通して、 フェアプレイの精神を養いたいと考えています。女子はバレーボール、 男子はサッカーを校技として中高6年間みっちり練習します。ほかにも学校から勝ちダルマで有名な箕面の勝尾寺方面まで歩く徒歩訓練がありますし、中1から高3まで学年ごとに野外活動として自然の中でキャンプも行います。クラブ活動も授業の延長線上にあるべきものという考えですから、他校のように多くの種類はありません。 時折、生徒たちの中から新しいクラブを作りたいとの意見が上がります が、まずは校長室で私を口説き落と せるだけの説得力あるプレゼンテーションができるかどうか。世の中、 熱い思いだけでうまく運ぶほど甘く はありません。まだまだ大きな壁と して、関門として生徒の前に立ちは だかりたいと思います(笑)」

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