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2024/04/15 東大寺学園中学校

奈良県で唯一の男子校であり最難関進学校である東大寺学園。
ここで育まれる人間教育とはどのようなものか。本郷校長に伺った。

 
 「特にこれといって語れる人間教育はしていません(笑)。昔ながらの教育方針を大切にし、勉強はもちろん大事ですが、勉強以外にも大事なことがあるだろうというのが本校の考えです。
 本校への志望動機についてアンケートを取ると、半数以上の生徒が『自由』という言葉をあげ、本校での学生生活に自由度を求めていることがわかります。『東大寺学園は自由な学校です』と特別謳っているわけではないですが、本校が目指すことの一つとしている『進取的気力の養成(自主性を伸ばすこと)』を成すためには、自由な環境が必要不可欠だと考えています。『何事も自分で考える。クラブや学校行事も自分たちで考え実行する。失敗しても良いからやり続ける。』成長はそのような自主性の中でのみ育まれ、異なる素質を伸ばすために自由が必要なのです。『個性の伸長、自主性の個性の伸長、自主性の確立、
そのための自由確立、そのための自由』本校はそこにこだわっている学校です。

 時代の流れに応じて本校でも昨今は補習などを行いますが、ひと昔前は夏休みの補講に関しても生徒の意見が反映されていました。『夏休みの40日は僕たちのもの。それぞれ克服すべき課題が異なるのに、一同に集めて補講をするのはいかがなものか』なんて当時の生徒に言われてしまい(笑)。でもその通りなんですよね。

 進学先の大学の先生から『東大寺学園出身の子はおもしろい子が多い』というお言葉をいただくことがあります。彼らは次々にやりたいことを提案してくるのだと。本校の生徒は本当に思い思いに好きなことをしています。男子校ですので女子の視線を気にせず没頭でき、『あいつ、ほんまに変わってる』『普通じゃない』という少々ネガティブに捉えられがちな言葉も、ここでは最大級の賛辞の言葉となります。例えば、折り紙ばかり一生懸命折ってる子。数学を突き詰めて数学オリンピックの日本代表になる子。5つのクラブ活動を掛け持ちしてそのうち3つのクラブで部長をやってる子。とりわけ印象深いのは、6年間この片田舎で自由に虫を追い続けていた子がいて、卒業後どうしているのかと思ったら、いつの間にか東京大学の昆虫研究室にいたりするわけです。みんな個性的で本当におもしろいですよ。東大寺学園の良いところは、〝学校の中に生徒それぞれの居場所があること、仲間と一緒にあるいは個人で思いきり好きなことに興じることのできる風土があること〞だと思います。それが楽しく居心地が良いため、遠方から通う生徒も嬉々として通学してくるのでしょう。
 本校は特進コース等を設けていませんので、アイツ変やな、おもろいなという子がごちゃまぜにクラスの中に存在し、それに周りが感化され影響されていきます。誰もが好きなことをし、その自由が尊重されていますので、クラスのどん尻の成績にいる子が『志望校は京都大学です』と言っても誰も笑いません。それには先輩の姿を5年間見続けている影響力も大きいと思いますね。とことん自分の好きなことに興じて来た先輩が、たとえ成績が芳しくなくても進学先の第一志望を変えない。『あの先輩やあいつが志望校を変えないんだから、俺も変えるもんか』と好きなことや目標に対して意志を貫く強さというものが、生徒たちの中での伝統としてあるのだと思います。

 そのように生徒が自由であるためには、教員たちも自由でなければなりません。本校においては生徒の偏差値を伸ばす教員よりも、生徒の個性を認めて伸ばせる教員のほうが必要だと感じています。授業に関しても教員の先生方には『自由にやってください。ただし、勉強の深み、おもしろさは生徒たちに伝えてほしい』と伝えています。大学入試は通過点に過ぎません。本校では『進度』より『深度』に重きを置き、教員たちは生徒が学ぶことを楽しめて興味関心を惹きつける授業を展開しています。そこから究めたい何かを見つけ、生徒たちはそれぞれ人生の目標を見つけていくのです。男子校だからこそ、この教員たちのユーモア過ぎる授業が許容されるのでしょう。本校の教員と生徒の関係性は非常に濃く、距離が近い妙な一体感を感じることができます。
家族感にも近い、この〝チーム東大寺学園〞を学校見学会等でぜひ体感して欲しいと思います。
 今後もこれまで醸成されてきた本校の伝統、気質を守りたい。彼らが卒業する時、『先生、自由に好きなことをさせてくれてありがとう』と言ってくれる生徒がい続けてくれることを願っています。」

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