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守破離とキャリア・デザイン

「守・破・離」という言葉は武芸をはじめ、習い事をする上での心構えとして知られている。「習い」から主体的な「学び」へ、自らの生き方をどのように見つけるのか、まだ見ぬ未来をどう切り拓いていくのか。考えるヒントがここに!

私立中高一貫校で学ぶ武道・芸道の世界。将来役に立つ素養をクラブ活動で学ぶ――

もともと「守・破・離」という言葉は、戦国時代に甲斐の国を治めた戦国大名、武田家の軍学書である『甲陽軍鑑』に記された戦術用語。江戸時代には武芸にも応用され、修行者の進むべき「道」の指針となった。雅楽や能楽など日本の伝統音楽では、「序・破・急」という言葉でも言い表されており、「道」を究めるための修行において、その順序段階を言い表している。

私立中高一貫校では、6年間の学校生活を「前期」「中期」「後期」と成長段階に合わせて教育を実践するケースが多く、まさにこの「守・破・離」とイメージがうまく重なり合っている。

今号の特集で紹介した野外での体験活動などは、その多くが「前期」段階である中学生を対象に行われ、高校生になるとそれまでの体験をもとに内省し、深い考察力で物事をとらえるようになってくる。多様な取り組みを通じて論理性を身に付けながら、子どもから大人へと階段をあがってゆく。本誌の取材時も、高校のクラスをのぞいてみると、はっきりアカデミックな雰囲気が漂っているのを感じる。

今回紹介する武道系・芸道系のクラブ活動というのは、心身の鍛錬とともに技術スキルの成長ぶりが見えやすい。そこで実際に「守・破・離」それぞれの段階を、順を追って考えてみたいと思う。

「守」
師匠から言われた基本的な型を守る

習い事という場においては、まず師(※芸事では師匠、武道やスポーツの場では師範、あるいは監督やコーチ)の教えを忠実に守ることが大事。話をよく聞き、行動を見習って、師の価値観を自分のものとするために不断の努力を行う。すべて型通りに修練を積み重ねてゆくが、技術スキルや精神性の向上を師が判断し認められると、学ぶ者に対して自ら考えることを求めるようになる。次の段階へ移ることになるのだ。茶道や華道では、中高の時期に段階に応じた免状を取得できるケースもある。

「破」
型に自分の創意工夫を加えることで、既存の型を破る

自分独自に工夫して、師の教えにはなかった方法を試み、型にはまったことを破る努力をするのがこの段階。今まで学んで身につけた教えや型、技が確実に身につき、修行がさらに進めば、自然と他流の教えや心がけ、よい技を取り入れ、自己の守ってきた型の技を破って心技ともに発展させることができる。

「離」
自分の世界を作り出すために型そのものから離れる

最後の段階は、指導者のもとから離れ、自ら学んだ内容を発展させることになる。試行錯誤の中で見えてきた自分流のスタイルを、経験によってさらに磨き上げて、独自の型を創る段階。新しいものを生み出すということは、社会から直接評価されることになり、当然、世間の荒波も自分で被ることになる。

これら「守・破・離」という考え方は技術のスキルを高めると同時に、生き方、つまり自立へのステップとしてとらえることができるだろう。武道・芸道の世界において、わずか中高6年間で「離」の境地に達することはもちろんできないが、入学したばかりの新入生が、やがて後輩を持つようになり、最高学年の先輩という立場へと成長する中で身につけることは多い。